浴衣も着物も日本の伝統的な民族衣装として、世界中に知られています。見た目が似ているため混同されがちですが、いくつかの違いがあることはご存じでしょうか。この記事では、2つの違いについて徹底解説します。成り立ちや着用に適したシーンも異なるため、ぜひ本記事でより和装への理解を深めてみませんか?
まずはそれぞれの歴史をチェック!
浴衣と着物は、日本の伝統的な和装として知られていますが、その誕生には異なる歴史があります。ここでは、浴衣と着物がどのようにして誕生し、発展してきたのかくわしくみていきましょう。
浴衣の誕生は貴族の湯あみ着「湯帷子」から
浴衣の起源は平安時代に遡ります。当時の貴族は蒸し風呂を好んでいましたが、その際に水蒸気による火傷を防ぎ、素肌を隠すために湯帷子(ゆかたびら)と呼ばれる麻素材の衣類を身に着けていました。
この湯帷子が浴衣の始まりだといわれています。安土桃山時代に入ると、湯上がりや寝巻きとしても用いられるようになり、この時期には、湯帷子が「浴衣」と名前を変えて広がり始めました。次第に庶民の間にも広まって、浴衣は自宅で着るものとしての文化が根付きました。
江戸時代に入ると、銭湯が庶民の間で普及し始めます。これにともない、銭湯帰りに浴衣を着用する人々が増えていきました。それまでパジャマや部屋着のように扱われていた浴衣が、銭湯の普及により外出時の普段着としても使われ、現代に伝わるスタイルを確立したのです。
着物の誕生は平安時代の「小袖」から
着物の誕生も平安時代に始まります。それ以前は、布を簡素に加工した衣類が一般的でした。しかし、平安時代に入ると、加工が容易で重ね着もできる着物が貴族の間で広まっていきます。
とくに高貴な女性は「十二単(じゅうにひとえ)」という何枚も重ねた着物を着ていましたが、その下に着ていたのが「小袖」と呼ばれる和服です。この小袖が現代の着物の原型とされています。
平安時代後期から鎌倉時代にかけて、小袖は次第に一般庶民の間にも広まり、江戸時代になると、着物は一般的な衣類として日本全土に定着します。この時期には、帯揚げや帯締めを用いたさまざまなアレンジが行われ、現在の着物スタイルが完成しました。
明治時代に入ると、西洋文化の影響で洋服が日常着として普及し始めました。これにより、着物は徐々に日常の服装から外れ、特別なイベントやお祝いの席で着用されるものへと変わっていったのです。現代でも成人式や結婚式、祭りなどの特別な場面で着物を着ることが一般的です。
浴衣と着物が違いとされるポイント
日本の伝統的な衣装である浴衣と着物は、外見が似ているものの、さまざまな点で違いがあります。これらの違いをくわしくみていきましょう。
着用する時期や場面
浴衣と着物のもっとも大きな違いは、着用する時期や場面です。浴衣はおもに夏(6~9月ごろ)に着用され、夏祭りや花火大会などのイベントでよく使われます。
旅館などで浴衣が用意されているのは、かつての日本人が浴衣を日常の部屋着としてリラックスするために使用していた名残です。一方、着物はお祝いの場や七五三、成人式など、季節を問わず着用できる正装や晴れ着として幅広く活用されます。
素材の違い
浴衣と着物は素材にも違いがあります。浴衣は夏の着用が想定されているため、汗を吸い取りやすく、乾きやすい木綿や麻、ポリエステルなどの素材でできていることが一般的です。
これに対して、着物は季節に応じてさまざまな素材が使われます。冬は暖かいウール、夏は涼しい麻、年間をとおして着用できる絹などがあります。
下に身に着けるもの
着物を着る際には、肌襦袢や長襦袢を着用します。肌襦袢は肌に直接触れる下着で、長襦袢は着物の下に重ねて着用し、首や袖口から見えるようにしています。一方、浴衣の場合は、透けるのを防ぐために肌襦袢や浴衣用のスリップを着用するのみで、長襦袢は着用しません。
帯の種類・結び方
浴衣には一般的に半幅帯を、着物には袋帯や半幅帯、名古屋帯などから着物の格や外出先にあわせて使用します。浴衣はカジュアルな装いのため、帯のデザインや結び方も自由度が高く、軽やかな素材や色合いの帯が多く使われます。最近では、ふわふわとした素材の兵児帯を合わせるスタイルも人気です。
足元の違い
着物を着る際には足袋を履き、その上から草履を履きます。足袋は洋服でいう靴下の役割を果たします。一方、浴衣の場合は足袋を履かず、直接下駄を履いて外出します。最近では、普段使いできる洋風デザインの下駄も増えており、よりカジュアルに楽しむことができるでしょう。
自由なアレンジで楽しむ人も増えている
着物や浴衣の魅力を最大限に引き出すには、アクセサリーや小物の選び方も大切です。アクセサリーや小物と和服をうまく組み合わせることで、季節感を演出したり、着る人の個性を演出したりしてくれるでしょう。
和服の印象・演出を変えたいなら、まずは帯留め、草履、扇子、帯締めの4つに注目してみてください。帯締めは帯を固定するための紐ですが、帯との色やお出かけのテーマなどにあわせて選ぶとおしゃれに見えます。
さらに帯締めにつける帯留めは帯を美しく見せ、つけるだけで和装コーディネートのアクセントになります。透明感のあるガラス製、七宝焼や貝細工が施されたものなどバリエーションが豊富なので、こちらも全体のバランスやテーマに合わせて選ぶのがおすすめです。
また、最近では草履や扇子などの小物を組み合わせるほかに、革製のポシェットやスニーカー、ブーツを自由に組み合わせて和洋折衷な雰囲気のコーディネートを楽しむ人も増えています。
ベルトやコルセットでかんたんに着付けできることもSNSを中心に広まっており、より和装を気軽に楽しめる時代になったといえるでしょう。皆さんも浴衣と着物、それぞれの特徴を理解し、季節やシーンに応じて使い分けながら和装を楽しんでみてはいかがでしょうか。
まとめ
浴衣と着物は、どちらも日本の文化を象徴する伝統衣装ですが、その起源や発展の歴史には大きな違いがあります。見た目こそ似ているものの、用途や着用の手順、素材まで多くの違いが存在するのです。これらの違いを理解し、魅力を知ればそれぞれの特徴を活かして和装を楽しむことができるでしょう。また、これらの伝統的な衣装を理解し、継承していくことは、日本の豊かな文化を次世代に伝える重要な一歩となるでしょう。
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