
着物を着る機会は限られていますが、結婚式や成人式といった節目の日には、特別感のある装いとして着物を選ぶ人が増えています。場の格に合った着物を選ぶことは、大人のたしなみのひとつともいえるでしょう。ここでは、シーン別にふさわしい着物の種類や格、着こなしマナーの基本を紹介します。
シーンに応じた着物の「格」を理解する
着物にはそれぞれ「格」と呼ばれる格式があり、場にふさわしいものを選ぶことが大切です。結婚式や成人式のような改まった場では、特にこの格の違いに気を配る必要があります。
第一礼装とはどんな着物か
最も格式が高い着物として知られるのが「第一礼装」です。未婚女性が着る「振袖」はこの第一礼装にあたり、成人式や親族の結婚式、披露宴にふさわしい装いといえます。袖が長く華やかな振袖は、若さと未婚の象徴とされており、フォーマルな場に最適です。
既婚女性であれば、「黒留袖」が同格の第一礼装とされ、親族として結婚式に出席する場合に着用されます。
準礼装や略礼装の位置づけ
「訪問着」は準礼装に位置づけられ、既婚・未婚を問わず着用できる便利な着物です。親族以外の結婚式への参列や、華やかさを求められるパーティーに向いています。「色無地」も場合によっては着用できますが、柄がなく落ち着いた印象になるため、少し控えめな場面に最適です。
成人式の振袖が第一礼装であるのに対し、訪問着や色無地はフォーマル度がやや下がります。
礼装を選ぶ際の基本的なルール
着物の格は、柄や色だけでなく、帯・小物との組み合わせでも変わります。たとえば、金銀の糸が入った袋帯を合わせると格が上がり、しゃれ袋帯や名古屋帯などを合わせるとカジュアルな印象になります。
場の格式に合う装いを意識するなら、着物単体ではなく、全体のトータルコーディネートを意識することが大切です。
成人式で映える着こなしのポイント
一生に一度の成人式では、華やかさと個性の両立が求められます。周囲との調和を考えつつも、自分らしい振袖を選ぶためには、いくつかのポイントを押さえることが重要です。
色と柄で印象が大きく変わる
振袖にはさまざまな色や柄がありますが、選ぶ際には肌の色や体型、会場の雰囲気なども考慮したいところです。たとえば、肌の色が明るい人は、濃い色合いの振袖が映えやすく、やや落ち着いた印象のある人には淡い色味が柔らかく見える傾向があります。
柄に関しては、古典柄や吉祥文様といった伝統的なデザインが人気ですが、最近ではモダンな柄や配色のものも増えており、選択肢は広がっています。
小物や帯で個性を演出する
帯の結び方や帯揚げ・帯締めの選び方によって、同じ振袖でも印象が変わります。華やかな帯結びを選べば、後ろ姿も目を引きます。一方、小物に差し色を取り入れれば、全体のバランスが引き締まることでしょう。
また、髪飾りや草履・バッグも、全体のコーディネートに統一感をもたせるアイテムとして重要です。成人式では写真撮影が多く行われるため、どの角度から見ても美しく映るよう意識することが大切です。
レンタルを活用する際の注意点
成人式では振袖をレンタルする人が多いですが、早めの予約が安心です。人気のデザインやサイズは早期に埋まりやすく、時期が遅れると選択肢が限られてしまう場合があります。
レンタルプランには、草履・バッグ・ショールなどが含まれるフルセットと、振袖単品で借りるものがあり、プランの内容をよく確認することが大切です。また、ヘアメイクや着付けが含まれているかどうかも事前にチェックしておくと安心です。
結婚式で着物を着るときのマナーとは
結婚式では、華やかさだけでなく、相手を敬う気持ちや場の格式を考えた装いが求められます。着物を選ぶ際には、形式だけでなく、色や柄、TPOに配慮した着こなしを意識する必要があります。
ゲストとしてふさわしい着物の種類
親族ではない一般のゲストとして出席する場合は、「訪問着」や「色無地」がふさわしいとされています。訪問着は模様が肩から胸、袖、裾に連続して描かれており、華やかでありながらも上品な印象を与える着物です。
一方、色無地は一色染めで控えめながらも礼儀を感じさせる装いで、帯や小物次第で印象を変えることができます。結婚式の雰囲気や会場の格式に応じて、華やかさと落ち着きのバランスを考えて選びましょう。
色と柄の選び方の注意点
結婚式では、白い着物や花嫁を連想させるようなデザインは避けた方がよいとされています。白地の多い訪問着や、金銀の装飾が多すぎるものは、主役より目立ってしまうおそれがあります。お祝いの場にふさわしい華やかさは求められますが、あくまでも控えめな華やかさを意識することが大切です。
また、黒留袖は親族が着るものであり、一般ゲストが選ぶと場違いな印象になる可能性があるため、選択肢からは外しておく方が無難です。
季節感や素材にも目を向けて
季節ごとの柄や素材を意識するのも、着物を着こなすうえでのマナーのひとつです。たとえば、春には桜や蝶、秋には紅葉や萩といった季節を感じさせる柄を取り入れると、より洗練された印象になります。
また、単衣(ひとえ)や袷(あわせ)といった着物の仕立てにも季節ごとのルールがあるため、着用時期とのバランスも忘れずにチェックしましょう。正しい季節感は、細やかな気遣いとして相手に好印象を与えます。
まとめ
結婚式や成人式は、人生の節目となる大切な一日です。そんな特別な日にふさわしい装いとして着物を選ぶなら、場の格式に合った種類をきちんと理解しておくことが必要です。成人式には未婚女性の第一礼装である振袖を、結婚式では親族なら黒留袖、一般ゲストなら訪問着や色無地がふさわしいとされています。また、着物の格だけでなく、色柄・小物・髪型といったトータルコーディネートにも配慮が必要です。季節や式場の雰囲気、着用する時間帯などにも目を向け、主役や周囲とのバランスを大切にすることで、着物本来の美しさとマナーが引き立ちます。着物を着るという行為には、相手を思いやる気持ちや日本の伝統文化を尊重する姿勢が込められています。着物を選ぶ時間も含めて、思い出に残る一日をていねいに準備しましょう。
おすすめ関連記事
-
着物レンタル関連コラム
あなたに似合う着物の色は?パーソナルカラーごとにおすすめの着物の色を紹介
自分に合う着物を選ぶのは、結構大変です。着物屋さんなどのプロや、身近な人に聞いてみるのもひとつの手で ...
-
着物レンタル関連コラム
着物レンタルの基本が分かる|初めてでも安心の選び方完全ガイド
着物レンタルは、料金システムや予約方法、着付けなど初めての方にとって不安な点が多いものです。本記事で ...
-
着物レンタル関連コラム
卒業式の袴にはブーツと草履どっちを合わせる?
大学の卒業式といえば、女性は袴姿が定番です。成人式の振袖姿とはまた違ったかわいさがあり、着るのを楽し ...
-
着物レンタル関連コラム
個性的な振袖コーデのアイデアを紹介
振袖は、日本の伝統的な衣装であり、とくに成人式や結婚式などの特別な日に着用されます。しかし、伝統的な ...
-
着物レンタル関連コラム
着物の選び方と体型に合わせたコーディネートとは
着物は日本の伝統的な衣服であり、その美しさと優雅さは世界中で愛されています。しかし、着物を選ぶ際には ...
-
着物レンタル関連コラム
結婚式で色打掛を着てもいい?白無垢との違いも解説!
和装の結婚式では、白無垢が一般的に思われがちですが、実は色鮮やかな色打掛という選択肢もあるのです。こ ...